久しぶりの更新です。
たまには文化を摂取して感想を出力しないと脳が腐る気がしますね。
先に言っておくとネタバレとちょっとグロい話があります。
『LAMB』
軽くあらすじ
欧州の片田舎で牧場経営を行う夫婦、娘を亡くしてから静かに暮らしていた二人が飼っている羊のお産を手伝っていると、羊人間みたいなのが生まれます。
二人はそれにアダと名付け、自分達の子供のように育てていく────という感じ。
個人的に印象的だったシーンは、時間旅行について夫婦が話す場面、妻が母羊を殺した場面、アダの実父(らしき化物)が旦那を殺してアダと共に消える場面でした。
まず時間旅行のシーン、旦那が時間旅行が理論的に可能になったらしいと言い、それでも自分はこのまま静かに暮らしたいと言います。
ですが妻の方は言い淀みます、まぁ娘を亡くしているわけですからね、戻れるなら戻りたいのかも。
この問答は、アダを受け入れるまでの時間が夫婦の間で違う事にも繋がるのかなと思います。
また、全部見終わった後にこのシーンを思い出すと、アダを手に入れた後の夫婦は過去の幸せだった頃に擬似的に戻っていた、時間旅行をしていたんじゃないか、とも思いました。
序盤に夫婦の間に漂っていた鬱屈し澱んだ空気、薄暗い静けさ、それを嵐と共に生まれたアダが吹き飛ばし明るく希望に満ちたものにしてくれた、まるで娘が生きていた頃のように。
その後夫婦は作中でセックスをします。
生命を創る行為、一般的には前に進む行為。
二人は化物を子供とし、希望に溢れた時間旅行へと旅立ったわけです。
まぁ、旅行のような楽しい時間は終わりを迎えるものですが。
次に母羊を妻が殺すシーン。
妻はある日、二階のアダがいる部屋の窓に向かって鳴いている羊がいることに気付きます。
妻はこの羊を銃で撃ち、土に埋めてしまいます。
そして顔についた血を拭い去り、何食わぬ顔で家に戻っていく、と言うシーンです。
妊婦切り裂き殺人事件、というものがあります。
要は妊婦を殺害し胎児を連れ去るわけですね、恐ろしすぎるだろ。
ちなみに世界中色んな国でこの手の事件が起きたことがあります、もちろん日本でも。
で、僕はこのシーンでそれを思い出しました。
もちろん人間の胎児と、羊と人間のキメラみてえなバケモンでは見た目は全然違いますが、明らかに夫婦の実子ではないことが分かる風貌というのが共通点かな、と思います。
誘拐、拉致、連れ去り…他者の大切な存在を奪い、自らの幸福に役立てる者は本当に幸せなのか…まぁ、そんなわけ無いですよね。
彼らは地獄に落ちます。
最後にアダパパ(妖怪羊人間)が旦那を撃ち殺し、アダと共に去っていくシーン。
急にバケモン出てくるのが超おもろいです。
声出して笑っちゃった。
それはさておき、映画の途中で何度か、アダが鏡の自分を見つめるシーンがあります。
アダ自身、人間の夫婦と羊人間の自分とで、違和感や疎外感を感じていたのかもしれません。
結局はアダも旦那を殺すことを止めず、アダパパの手を取り去っていきます。
そして妻が瀕死の旦那を見つけ、アダも去っていったことを理解し絶望したところで映画は終幕します。
楽しかった時間旅行はおしまい
苦しい今に戻らなきゃいけない
妻が最後に抱いたのは、今を生きることへの絶望だったのかもしれないですね。
まとめ
過去には戻れない。
他者から奪ったものでは幸せにはなれない。
エッチシーンねっとりしすぎだろ。
犬を殺すな。
この映画を観て抱く感想は人それぞれだと思います。
個人的に、ワンシーンでも気に入った部分があればそれはその人にとって良い映画だと思います。
だからこのLAMBも僕にとって良い映画です。
なぜなら急に出てくるバケモンが超おもろいから!
おしまい