ていぱん備忘録

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神楽桃架空思い出配信②

「神楽桃との最後の思い出。」配信用に書いた、シチュボ?台本です。

 長いしレギュレーションに沿ってるのかもわからんな、フリースタイル部門での参加ということで

 

 あれは私が小学生になる前の頃だから、もう20年近く前ですかね。
 あの人に出会って、そして別れたのは。

 私は、都会の人には想像もつかないくらい山奥の村で育ったんです。
 この村で一番高い山の中腹に、古びた神社がありました。
 鳥居も社もボロボロで、なんの神様を祀ってるのかも良くわからなかったんですが、村の老人たちは「カグラ様」と呼んで崇めていました。
 神楽って神様に奉納する舞のことなんですよ。
 それが神様の名前ってなんか変だと思いません?
 まぁあの頃の私はそんなこと知りませんでしたし、そんな神様がいるんだなあとぼんやり思ってました。

 ある日、私がすごい高熱を出したことがあったんです。
 おり悪くその日は大雨で、さっきも言ったようにかなり山奥の村でしたから、麓の診療所に行くのも難しくて。
 そうしたら祖父が
「カグラ様にお願いばしてくっけん待っとれ」
 と言って神社に向かったんです。
 大雨の中、山に向かう祖父を家族みんなが止めたんですが、制止の声も聞かずに行ってしまったそうです。
 その日の晩でした。
 熱で朦朧とする私のそばに巫女服を着た綺麗な女の人が現れたんです。
 その人は
「これが最後かな」
 と言って微笑みながら、私の頭を撫でてくれました。
 その後私は気を失うように眠りについたんですが、翌朝目覚めると熱はすっかり引き、体調もすごく良くなっていました。
 結局祖父も無事に帰ってこれて、家族みんなでカグラ様のおかげだって喜んでいたのを覚えています。

 大雨が止んでしばらくした後、お礼参りということで私は祖父に連れられて神社へと向かいました。
 今にも崩れそうな鳥居を抜け社に参拝した後、本殿の方にもお参りに行くぞ、と祖父に言われました。
 その時はじめて知ったのですが、山の頂上付近に御本殿があったそうなんです。
 急な山道を登り、途中から祖父に背負われながらたどり着いたそこにあったのは

 燃え落ちた蔵、でした。
 祖父は驚いたような顔をした後、涙をボロボロと流しながら、今まで本当にありがとうございました、と言ったんです。
 私は訳もわからず、ですが大切な何かが失くなってしまったことを感じとりました。
 
 長いこと手を合わせて感謝の気持ちを告げた後、祖父におぶわれて山を下りました。
 背負った私に向けて祖父が話してくれたのですが、カグラ様というのは、悪いものを仕舞ってくださる神様だったんだそうです。
 きっと、あのヒトは仕舞い込み過ぎてしまったんでしょうね。

 そうそう、カグラ様の名前ですが、漢字で書くと「禍いを仕舞う蔵」で「禍蔵」様なんだとか。
 字面は恐ろしいですけど、とっても優しい神様でした。
 最後の力で私を助けてくれた方ですから。
 感謝ですか?もちろんしていますよ。
 だからこそ、こうやって神社を綺麗に建て直したりしているわけですから。
 ただ、御本殿は蔵じゃなくて普通の神社にしようと思っています。
 だって、悪いものを背負い込ませるだけ背負い込ませるなんて気が引けるじゃないですか。
 …そんなに笑うような話でしたか?
 まぁそんなわけなので、神社が新しくなったら、またぜひ参拝に来てくださいね、綺麗なお姉さん。

 

 これで伝えたいことはそう!

「何事も背負い込みすぎるな」

 ということですね!